第6章 我愛羅さま
2人がやっと帰ってきた。
「また、後日、正式文書で送るようにする。わざわざ此方まで出向いてもらって感謝する。ありがとう」
我愛羅さまが落ち着いた声で、お見合い女性に声をかける。
「素敵なお時間をいただき、ありがとうございました。どうぞお元気で」
2人共、柔らかな笑顔だ。みんな笑顔なのに、私だけ引きつった顔をしてさよならをしていた。
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我愛羅さまは、ふぅと溜息をついて風影室に戻り、席に座る。
私は前に立ち…黙って見ている。
何かを発する勇気は無かった。
「花奏、すまない。色々と準備をしてもらって助かった」
「いえ、とんでもございません。我愛羅さまの為なら…、何でもやらせていただきます」
徐々に歯切れが悪くなっていくのが自分でも分かった。震えている。
今、私は心拍が跳ね上がっている。
次に、どんな言葉が我愛羅さまから出てくるのか、不安で不安で仕方ない。聞きたくない。
「花奏、今日は色々考えさせられた日になったよ」
「さ、左様でございますか……」
「ああ。気持ちがとても晴れ晴れしている。なぜかわかるか?」
「お、お見合いが良かったから……ですか?」
口角を一生懸命にあげた。力を入れていないと、笑う事が出来ない。こんな言葉を言いたくない。仕事だろうが秘書だろうが、喋りたくない。
「モミジさんと、話をして己の気持ちに気付いた」
我愛羅さまが私を見つめて、核心の話を始めようと、口を開いた。