第5章 シカマル 少甘
「ハハ、花奏やっぱ強ぇな…」
「シカマルどうしたの?今日は勝ちかな、私の」
「うるせー、まだ手はあるはずだ」
「………………」
印みたいなポーズをしながら戦術を練る。
「………………」
ーーやっぱ、ここしか、道はねーか。
勝ちを確信する花奏を、真っ直ぐに見つめる。
「二言はねーんだな?」
きっぱりした口調でオレは確認する。
「……何の話?」
「オレの願いを何でも叶えてくれるっつー話だ。楽しみにしてるぜ、花奏」
オレが真剣に花奏を見つめ続ければ、ぴくりと眉と目を動かす。
「……急に真面目な顔しないでよ。アイスとかジュースだよ?」
ーーオレがやる気なんか出さねーって高を括ってたな。
ーーそうはいくかよ。
「ほら、これで詰みだ」
王手の駒を指に力を込めて急所を指す。
「……っ!!」
その駒をずっと見つめ、花奏は唸りだす。
「………………」
「…………………!…」
ーーねーよ、もう突破口はねェはずだ。一番最初に置いた駒がここで生きてくんだよ。
口もとが上がらないよう我慢しているが、無理だ。
花奏の視線がぶつかる。
「…………詰みじゃね?」
その声を合図に、はぁ、と巨大な溜息を吐く。
花奏が姿勢を正してお辞儀をする。
「……………参りました」
しおらしい声を出し、素早く駒を片付け出す。
「あと一歩だったのにー、今日も負けたー」
「へへ…またやろうぜ、花奏」
オレも満々とした表情を出して手伝う。