第5章 シカマル 少甘
「シカマル……漢字テスト、この前返ってきたよねー」と不意に声を出す。
「つーか、一番めんどくせーテストの話かよ」
と、しけた顔しながらオレは駒を置いた。
「いやね、チラリと見えたからさ。シカマルの答案用紙がね」
駒を並べる指の動きを止めて、意味深な目でオレを見る。
「…………んだよ、点数みたのか」
ぶっきらぼうに声を出せば、花奏は苦笑いを浮かべる。
ーー……今の顔、反則だろ。
赤くなる頬を隠すように、素早く盤に視線を戻して、続けて駒を並べた。
「……けどよ…、計算とかの方がおもしれーって思わねーか?答え方がーつしかねー問題なんて、書くのもめんどくせーー」
口を尖らせて言えば、花奏は含んだ笑みを浮かべる。
全てを並べて対局を始める。
先手は花奏、後手はオレだ。
「ふふ、シカマルらしいね。でもね、あれは手を抜き過ぎだよ」
最初の一指し、花奏から始まった。
「いいんだ。落第しなきゃ問題ねーよ」
オレは「歩」を進める。
「シカマル…あのさ、私に次のテストで勝ったら、何でもお願い聞くから、一回だけ本気出してみてよ」
「…………何言ってんだ、急に……」
目を開いて花奏を見る。
ーー……お願い⁈⁈
ーー何でも……⁈⁈
ーーつーか、コレはありえねー。