第5章 シカマル 少甘
「シーカマル。一局お願いします」
アカデミーの昼休み中。
窓に映る雲をぼんやりと眺めていれば、花奏が薄笑いを浮かべて盤と駒を持ってくる。ついでに丸椅子も足で引っ張る。
ーー器用なヤツだな
「お、いいぜ、やるか」
おれも姿勢を整えて、気合いを入れる。花奏と対局する事がオレの日課だ。
「男が女に負けるわけにゃいかねーしなぁ…今日も勝たせてもらうぜ」
意気込みを語れば、花奏は半眼になる。
「ふーん、でもいっつもギリギリじゃん、私と勝負する時。意外と苦戦してるよね、シカマルって」
「フン、……お前強ぇんだよ。頭働かせねェと勝てねーからな」
そう言って、にやりと笑いあった。
けどな、花奏は、最初は全然強くなかったんだ。オレと張り合うようになりたいって勉強したり本を読んだりする勤勉なヤツだ。結構お茶目な一面もあって、オレが最近好意を寄せている女だ。
他のヤツらは談笑したり、横にいるチョウジは塩味ポテトチップスを食べてゲップをして、あ、寝るのかよ。
あーあ、気持ち良さそうに寝ちまった。
「寝るの早すぎじゃん。チョウジったら、アハハ」
花奏は、盤と駒を机に置いて、丸椅子に腰掛けて、さーやるぞー、と声を出してオレと向かい合うように座った。
木箱を開け、2人で将棋の駒を並べ始める。
花奏が、チョウジに柔らかな笑みを向ける視線に、オレは気づく。
「…………おい、手が止まってんぞ」
「ああ、ごめん!チョウジったらあんまり幸せそうに寝てるから、可笑しくてさー」
「チョウジの行動パターンはいつもと一緒だろ」
「あ、そうなんだけどね、癒し系?」
「…………ほら集中しようぜ」
う……悪ぃー、チョウジー…
お前の事、一瞬、睨んじまった……。
ダメだダメだ、と盤に顔を戻して自分の駒を置く。