第25章 五条悟 告白の後悔
「いまも……好きだよ。長年わたしなんかに好かれて、五条くんは迷惑だったかもしれないけどね」
小さく花奏はつぶやいた。五条悟への告白をいつまでも引きずっているほうが悪い。
苦労する自分自身に飽き飽きしているのに。それでも止めれない。
茶化されても意地悪されても、それでも五条悟が好きな気持ちは変わらない。自分は頭がおかしいマゾ体質なんだと密かに思った。
他の人と付き合っても好きを消せなかった。それがお付き合いが長続きしない一番の原因であり答えだと、自分が一番わかっていた。
「五条くん。好きだよ」
ーなんてね。目覚めたら、今の言葉をいえない。寝てるからいえる言葉だ。
花奏は、五条悟の眠っている姿が好きだ。するりと銀髪を撫でた。文句をいわれない。素直だ。
赤ちゃんは寝ているときが天使に見えるという母親の気持ちが少しわかる。
元気になったら、いつもの意地悪で無敵な五条悟に戻るはずだ。歌姫と恋仲になってほしい。そしたら諦めきれるはずだ。実らない恋に終止符をそろそろうつべきだ。
「帰るね」
返事のもどらない寝室から花奏は物音をたてないように去った。扉が閉まる瞬間も五条悟をみた。顔色が少しだけ戻っているように見えた。