第25章 五条悟 告白の後悔
「僕は、あの日をずっと悔いていてね。でも素直にごめんといえなくて。僕はどのタイミングでいえばいいかわからなくなくて……若かったんだ」
いまなら。と続けた。
「いまの僕なら、喜んでオッケーするよ。なんであのときイキがって酷いこといっちゃったんだろうね。気づいたときには、すでに手遅れなのに。好きで好きでたまらないのに。なんであのとき素直にありがとうって感謝いえなかったんだろうね」
五条悟は少しあいだをあけて言葉を続けた。
「花奏が、あれ以来ずっと僕を嫌いになるって、どうして少しでも想像しなかったんだろうね。あのときのバカな僕は……ほんとうに気づいてなかったんだ。悪かったね」
そう五条悟はいった。ため息をつきながら。
無言になり花奏が振り返ると、すうすう寝息をたてて、いつの間にか五条悟は寝ている。毎度お馴染みの盛大な嘘や茶化した言葉じゃなかった。
嘘ピョーンと最後におどけるって思った。最後まで五条悟は嘘だといわなかった。
驚いた。花奏は動揺が激しい。無敵な五条悟が風邪をひいて頭が正常に働いていない。だから、わけわからないことを話したんだと花奏は結論に至った。
ーー私がすき?
花奏は恐怖でおののいた。バカな。立ち上がる。そんなバカな。急いで逃げなければ。危ない。恐ろしい。コレには底知れぬ裏があるはずだ。なにか取り憑かれてて。
慌てて玄関に向かい、靴をはいて扉をあけた。そのまま閉めようした。
そのときだ。
ゴホゴホと咳が寝室から聞こえた。花奏は自分の手を止める。
"ごめん。花奏……"
消えそうな声が耳に届いた。花奏は泣きそうになる。急に辛くなった。なんで? ぎゅっと目を強くつむった。でも。と目をあけて息を吸ってもう一度ドアを開いた。
「五条…くん?」
五条悟の眠る寝室に足を運んでいく。それから眠る吐息の近く物音を鳴らさないように腰を下ろした。
ごめん。
うわ言が聞こえる。何回も謝っている。花奏は苦笑いで微笑んだ。
「……怒ってないよ。もう」
調子狂う。いつもみたいに茶化したりしない五条悟が変に見えた。しおらしく謝るなんて見たことない。しかも寝ながら。
「大丈夫だよ」
素直になれたのは
五条悟が眠っていたからだ。