第25章 五条悟 告白の後悔
「っ!?あーー悪いって!怒んないでよー」
五条悟が花奏の腕を掴んだ。腕を引っ張られて、まったく動けない花奏は怒った。「もう離してよ!」
「やだね」
全然離さない。信じられない。手が強いし熱いし。何度あるの!?38℃は軽く越えている。さすがに病人に強く出れない。力を緩めた。
「なに?なんか用事?」
「ひとりにされたら僕死んじゃう」
「最強が風邪で死ぬわけない」
早く寝たらいいのに。はあ、と五条悟に根負けした花奏は息吐いてベッドサイドに座った。なぜか五条悟が胸を撫でおろす。
「あ、歌姫先輩が任務前にバカでも風邪ひくんだって言ってたよ。お大事にって伝言だね。よかったね心配してくれて」と花奏はいった。
「それ、心配のうちに入る?僕なんにもしてないのに、いっつも歌姫怒るんだよね」
無自覚か。歌姫先輩なりの五条悟への最大限の優しさのお言葉だと思うが。
「歌姫が好きでしょ?」
猛烈に心音が強く鳴った。五条悟の核心をついたからだ。もしそうだといわれたら逃げだすだろう。
「んー、まー好きなのは好きだけど、んーいじりキャラみたいな」と平気そうに五条悟はいった。
「歌姫先輩が聞いたら殴られるよ」忠告した。ならば私もか。花奏は気分を害した。
「花奏」
「なんですか。もう帰っていい?」
「僕さ花奏のことも嫌ってないよ?」
花奏の顔が真顔から鬼の形相に変わった。ひくひくと目の下頬が動いた。
五条悟は風邪をひいて頭がさらに酷くなったようだ。意味不明な発言だと思った。なにがいいたいかも理解不能だ。
「それはどーもありがとうございます」とぶっきらぼうにいった。
少し間があった。それから五条悟が独り言のようにつぶやいた。
「悪かったね。昔傷つけて。これでも僕は後悔してるんだよ」
「そうは見えないけど」
ぷいと花奏は顔を背けた。ひと寂しいだけで風邪をひいて弱っているだけで本心じゃない。決して信じるな。自分に繰り返し言い聞かせた。それでも五条悟は喋ることをやめない。