第25章 五条悟 告白の後悔
「悪いね」
びっくりした。なんとチャイムを鳴らす前に鍵を開き扉が動いた。声は枯れている。マスク越しに咳も出ている。
「花奏、とりあえず上がってよ」
黒マスク姿に目隠し状態。このまま銀行に行けば泥棒だって通報されるだろう。なんて不審者だ。
「玄関で渡すよ。これ薬で!」
「あーー、しんどー」
咳をしながら寝室に戻った。花奏の話なんか聞いちゃいない。
中へ!?……なんで!?
帰りたいのに薬は本人に渡していない。仕方なく扉を閉めて靴を脱いで五条悟の背中を追いかけた。
ベッドで横になった五条悟は咳をしては「あーーしんどー」とまた弱音をはいている。なんと珍しい姿だろうか。
「これ、硝子から頼まれたお薬。あと、ウィンダーゼリーと果物のゼリー。甘いの好きでしょ?冷蔵庫に入れとくね?」
人様の冷蔵庫を開けて中に適当に入れた。水と薬を持って五条悟の寝室へ足を運んだ。
「これ、すぐに飲みな、だって」
「あー、はいはい。サンキュ」
五条悟は上体を起こして薬を口に含んで水を一気に飲んだ。それからまた横になった。
「……ねーー、花奏ってさー、また別れたんだって?」
五条悟のベッドの横に座ろうとした瞬間だ。かがんだ姿勢のまま、自分の顔が強張った。鬼の形相一歩手前である。
「ダレからきいたの」声色は低い。なんと恐ろしい。どこから最新情報が漏れたのだ。
「えー? 硝子だったかな。歌姫だったか七海だったか忘れたわ。ねー僕は、だから続かないって忠告したよね?」
無言で腰をあげた。なんて無礼千万だ。あー腹立たしい。
「私の話はどーだっていいから」
帰る!時間の無駄だ。不愉快極まりない。なんてやつだ。心配してきてやったのに。あープンプンするわ。