第24章 サンジ君(DNH企画)7章の続き
「すまねェ、花奏ちゃん!ひと言、声をかけて行けば良かったぜ、だいぶ時間が過ぎちまった!」
噴水前のベンチで座っていれば、サンジ君が走ってきた。わたしの前でとまると、汗を滲ませて中腰になる。
「ううん、大丈夫だよ。気にしないで」
首を左右にふった。腕時計は40分過ぎた。5時まであと20分もない。
ナミの服の荷物を運んであげていた。だから仕方ない。本当にサンジ君は優しい。
「帰ろっか。もう日も暮れそうだね」
ストライプのミニスカートが風で小さくゆらゆらと動く。わたしは……笑えない。頑張って苦笑いだ。
女性がみんな一番。女性が大好きで、大切でそれから優しい。困った女性を見かければ、必ず助ける。
デートだなんて期待し過ぎたわたしが、悪いだけ。
サンジ君が中腰のまま、
顔をあげた。
「花奏ちゃん……? 行きてェ所あるだろ?どこがいいかい?……服を買ったのかい? 持つよ」
少し呼吸が整ってきたサンジ君の右手。私は下着や服が入った紙袋を渡さないで、自分のほうへ引き寄せた。
「いいよ。重くないよ? あーもう帰ろっか、暗くなってきたし」
わたしはベンチから重たい腰を起こして、サンジ君を通り過ごした。
早く帰りたい。
「待てよ、花奏ちゃん!悪かったよ、怒んなよ!」
わたしの腕を掴んだ。その手をとっさに振り払った。
「…っ!」
サンジ君の息を飲む音が聞こえる。これで嫌われてしまうかな。でも、もう、もう、わたしは、どうでもよかった。
女好きだし。私よりナミを優先するし。時間には遅れるし!わたしがいるのにどっかいっちゃうし。
今日……
わたしを優先してくれたこと……
一度でも……あった??