第22章 シカマル
「なあ」
シカマルが私の顔を覗く。
黒い瞳が合致した。
「な、なに?」
「花奏、部屋入らせてくれねーか?話してーんだよ、おめーとよ」
シカマルの声が
やけに真剣で。
目は切なげに見えた。
「えっ……でも、ほら汚いし。部屋……散らかってるし」
一人暮らしの私。テマリさんと歩く姿を見る前までは、逆だった。シカマルが「帰りてーー」とか言っても、家に招き入れて、好きな将棋やオセロをしていたのに。
あれから1度も、家にあげてない。
戸惑う私をみても、シカマルは続ける。
「じゃー、玄関でも良い。話しようぜ。埒が明かねーんだよ。めんどくせーけどよ」
それは、あまりに真剣で。
シカマルらしくなかった。
だから。私は「分かったよ」と伝え、
ドアを開けてしまう。
でも、さすがに……。
本当に玄関で話をするのは失礼だ。
私はシカマルに、
部屋へ上がってもらった。
「ちょっと待って!!!」
室内干ししていた下着を発見して、すぐに取った。あああ!!最近雨が続いてたから、今日も干したまま出かけたのだ。
「見てないよね!?」と振り返ったら、ゲラゲラ笑ってた。顔を押さえて。
「いや、見てねーけど。拾いそこねてるぜ、それ」
シカマルの指の先に、ブラジャーが絨毯上に落ちていた。血の気が引くとはこの事だ。
「み、見たらダメ!!」
即座に拾って、箪笥に突っ込んだ。
ぁぁぁ…。
穴があったら入りたい。
「あ、飲みもの入れるね?」
恥ずかしさを隠すために、私は台所に行って、飲みモノを用意した。
「どうぞ、お茶でいい?コーヒー作ろうか?」
もう顔から湯気が出そう。
クッションに座るシカマルは、肩を揺らせて笑ってるし。
「いや、茶でいーぜ。気にしねーでいいのによ。かったるいだろ?」
シカマルはそんなことを言うけれども、私が出した、温かいほうじ茶を口にすると、「美味しい」と言った。
「それ、貰い物だけどね」
それだけなのに。
私は嬉しいのか、顔が綻んだ。
2人きりで会うなんて、
本当に久しぶりだ。
シカマルは、しばらく私と談笑した。
そのあと、唐突に話を変える。