第22章 シカマル
シカマルに、好きな人が出来たと、聞いたのは、中忍試験が終わった頃だった。
そのあと、
テマリさんと歩く姿を
目撃してしまう。
そこからだ。
私はアカデミーから同じだったのに、ずっと仲良しだったのに、シカマルを徐々に避け始めたのは。離れたのは。
※※
「花奏じゃねーか、久しぶりだな」
飲み会の帰り道。
突然、肩を叩かれて、
私は振り返った。
「いま帰りか?」
にぃっと、優しく笑う上忍は、
任務服を着る。
「シカマル……」
昔から同じ。
黒い髪を後ろで束ねている。
両手はズボンの中。
「ああ、本当だね。久しぶり…シカマル」
なんで。タイミング悪く
会っちゃうんだろう。
私は合コン帰り。さっきまで一般の男性といて、別れたばかりだった。
「シカマルは任務帰り?」
「ああ。家近いし、いっしょに帰ろうぜ。ていうか、花奏と喋るの久々かもな。任務もまったく同じにならねーしよ」
「あはは、なんでだろうねー。まあ、シカマルは、フォーマンセルでは隊長になることが多いし」
誤魔化して笑ってた。
シカマルの視線が痛い。
「じゃー次は花奏と、絶対いっしょにしてくれって、綱手さまに言っとくな」
「は、ははは、だけど、綱手さまも忙しいし、無理言っちゃったら、怒られるよ」
早く。早く家に着いて欲しい。
シカマルはIQ200あるんだ。
私が隠した真実なんて、
簡単に見抜いてしまう。
嫌がってるのが分かったのか、
シカマルは話題を変えた。
「花奏、お前、酒苦手じゃなかったか?」
「え、ああ酒臭い?まあ、今日は飲まなきゃ、話にならないしね」
合コンだなんて言えない。
さっきまで飲んでいた男性とは、少し良い雰囲気だった。それは、シカマルを忘れるチャンス。
「ありがとう、シカマル 。またね」
玄関前まで送ってくれたシカマルに
笑顔を向けた。
「じゃあ、おやすみなさい」
平常心を保ちたいのに、
言葉が揺れる。
テマリさんと並んで歩く姿を見てしまってから、私は一度も正面から、シカマルの顔を見れない。
今も、一瞬だった。シカマルの切れ目が合致しても、そらしていた。
こんな女、
シカマルにとっては
本当に面倒くさい女だろう。
自分ですら面倒だと思う。