第20章 隠岐くん(ワールドトリガー)
「可愛いーーー!!」
にゃあって鳴く小さな声が可愛い。ふわふわの毛並みが可愛い。仕草が可愛い。尻尾が可愛い。お目々がかわいいー。
「ぜんぶ可愛いーー」
人懐っこい性格なのか、私が隠岐くんの玄関から上がっても、逃げようとしなくて、すりすり足に身体をこすりつけてくる。
「お邪魔します。ごめんね、タオルまで借りちゃって」
外の雨が本降りになる。隠岐くんの家で雨宿りさせてもらった。肩や手や足を拭く。結構濡れてしまった。傘をさしていたのに、全然意味がない。
「うん、えーよ。気にせんで。親も帰ってくるん、遅なる言うて連絡来たわ」
「そっか。ありがとう」
隠岐くんの部屋に案内された。後ろからニャンちゃんも、いっしょについてくる。ああ、ピンと立つ尻尾が可愛い。好奇心旺盛なんだな、凄く私を見てる。
「おじゃまします……」
「いやいや、立ってやんと入りや」
「う、うん。ありがとう」
促されて、隠岐くんの部屋に入った。凄くシンプルで、本棚は男の子らしい。本が並んでる。
隠岐くんはバンザーをハンモックにかけた。黒髪が揺れる。
「お茶入れてくるわ」と言い
キッチンへと向かった。
私はクッションのうえに座った。すると、猫も私の膝の上に座る。
「う、わ、乗ってくれた!」
あたたかい体温が膝から伝わる。白い毛がふわふわしてるー、可愛い。猫欲しいなー。
「なんか、こんなに可愛いと、猫を飼いたくなっちゃうね」
「そうやろ?メッチャ可愛いやろ? はい、どーぞ」
戻ってきた隠岐くんは、私の横に腰を下ろす。お茶を持ってきてくれた。
「うんうん、可愛い。あ、お茶ありがとう。もらうね」
私は受け取り、お茶を一口飲んだ。あたたかくて落ち着く。視線を感じる。コップを机に置いた。
「にゃあ」
膝の上にいるニャンちゃんが私を見てる。キラキラ何かを訴える目。オヤツが欲しいのかな。