第18章 続き★サソリさん
「サソリさん、絶対に怒ると思っていました」
すぐあとに、店員さんが飛んできてテーブルを綺麗に拭いて、新しいデザートを持って来てくれた。次回の無料券もくれて得した気分だ。
「……ガキに怒るほど馬鹿じゃねえ」
そう言ったあと、肘をついて
足組みをして再び景色を眺めた。
「オレに……子どもがいれば、あんな感じだ」
「……え?」
新しく取ってきたチョコケーキを食べる手を止めて、サソリさんを見た。
「傀儡じゃなければ、オレはあんな親父だろうな。いたら……の話だ」
持っていたフォークを落としそうで、慌てて力を入れた。
「……付いてんぞ」
頬に触れるサソリさんは、「ほら」と言って指についたクリームを見せた。
「あ、ああ!……ありがとうございます……」
触れられた場所が熱い。
「早く食えよ」
「…はい」
少し表情を緩ませたサソリさん。なんだか優しい。
「サソリさん……、私がいちごが好きだと、どうしてご存知なんですか?」
私はさっき聞きたかったことを聞いてみた。
暁に入り、苺が好きなことをだれにも話していない。どうして知っているのだろう。
砂隠れの里で、幼い頃は
いちごやフルーツは貴重だった。
たまに市場に並んだとき、私は真っ先に買いに行った。
知らない。
そのことを知らないはずだ。私は眼中にも入っていないのに。
サソリさんは、
景色を眺めたまま
静かに喋った。
「女は……甘いものが好きだろ。 花奏の顔を見ていれば分かる。 お前は、すぐに顔に出る」
「っ! ああ、なるほど……そうですか、すみません」
暁の一員だ。
指摘されて恥ずかしい。
「だけど……特定するのは……」
サソリさんは、私の言葉に
ふっと、吹き出した。
「オレは……、お前にすぐに目がいく」
そう言って、私に目線を合わせるサソリさんの表情は優しい。