第16章 ワールドトリガー 風間さん
諏訪さんも、前回の飲み会は、
手を焼いて大変だった。
いや、全員で風間さんを止めに入った。
いきなり居酒屋の店を飛び出し、
赤いポストの前に立つ。風間さんが、トリガーオンして、切り刻もうとしたんだ。
止めたら次の狙いは、電柱、車、自販機。
アレしちゃダメなヤツ。
目撃者は、深夜だったため、
いなかった。
これ幸いだ。
おかげで本部からの、
お咎めはなかった。
いや、報告していない。見てない。聞いてない。
大人の事情で
なかったことにした。
風間さんは、Aランク3位なのに、
酒ぐせが半端なく悪い。
絡む絡む絡む。
特に、先週は、かつてないほどに酷かった。
迅さんが、いなかったら、
今ごろ電柱は真っ二つだ。
風間さんは、
突然スイッチが入る。
となりに座るわたしは、
内心ヒヤヒヤである。
「拝んで、花奏は、なにしてんだ?」
とにかく、飲み会が、安全に、安心して、無事に
終わりますように、と。
「あ、いいえ! かか風間さんが、とととなり、わたしははは初めてで、うう嬉しくて、かかか神さまありがとうー、と言ってました」
目を不自然に笑わせて、口はしを、無理に上げた。
「……はあ? 本当に言ってるのか?」
風間さんが、不審げに目を細め、
眉間にシワを寄せる。
わたしは目を右へ左へ、
泳がせた。
「風間さん、カッコいいから、緊張しちゃいますね」
だはははぁ、と頭に手を置いて、酒を飲んだ。
あー美味い。マンゴーオレンジは、甘くて、冷たくて美味しい。ジュースみたいで、色は絵の具みたいに綺麗だ。
しかし、ここ店のお酒、アルコール濃度が高い。回るのが早い。ぐらっとしてしまう。
濃いなあ、濃いなあ、と思って飲んでいたが、風間さん、ビールだけだよね?
ちらりと風間さんのジョッキグラスの中身を見た。まだいけるよね、と思ったら、もう半分もない。次4杯目だよね?あれ?今日ペース早すぎじゃない?
とにかく、とにかく、話しかけて、
飲むスピードを
落とさないといけない。
「お酒強いですよね? わたし、弱くて、すぐ顔が赤くなるんですよー」
「体質があるらしいがな」
一気に飲みきった。
ダメダメ。押さえて、押さえて!
風間さんは、大きく息を吐いて、
空になったジョッキグラスを、
ドンッと置く。