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【ペルソナ5】トーキョーベイビー

第2章 運命の花びら



「あ・・・」

もし声がここへ届いていたら、そう呟いたと思わせる形に小さく唇を開いている。

そして多分、今、私も同じ表情をしていると思う。

身体の芯に電気を流されたかのように、私はホームの最前列から離れ、ふらふらと彼の居るホームへ足を進めた。階段を上がり、コンコースへ。

その時、向こう側から彼が歩いて来た。

しっかりした足取りで、明らかに私の方へ向かって歩いて来る。

周囲のざわめきをかき消す程に私の耳を支配する大きな音が、私自身の胸の鼓動だと気付く頃には、もう目の前に彼が立っていた。


通り過ぎる人混みが妙に遠く感じ、映画のワンシーンみたいだ。


まるで久しぶりに再会した恋人の様に自然と手と手が触れる。

はたから見れば、さっき目が合っただけの関係とは見えない程に。


「・・・待っててくれたんだ」


静かに彼が口を開いた。

ふいに何故か懐かしいという気持ちが沸き上がる。
勿論初めて会った仲に、待っていたも何もない。


なのに。


運命的な予感が私から離れない。


「・・・多分、きっと貴方に会うの、待ってました」


私の口から出た言葉は、彼の言葉を受け止めていた。


「不思議な気分だ。君とは初めて会った気がしない」

「私も、です」

「会いたかった、ずっと」


彼の手が私の顎に触れ、続いて彼の唇が眼前に迫る。

そっと目を閉じ、受け入れる。


花びらの様に優しく淡い口付け。


はらりと唇から離れたその感覚に目を開けると、彼が優しく微笑んでいた。
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