第3章 まだ無題
その日の夕方。
仕事で先方に書類を届け、私はそのまま直帰する事を許された。
届け先は新宿のど真ん中に位置する大手会社。
帰宅ラッシュに潰されそうになりながら、ようやく書類を届け終え、さて帰ろうかと言う時に不意に目の前に二人の男性が立ちふさがる。
スーツにも関わらず、華美なアクセサリーや髪形で。
・・・ナンパ?ホスト・・・?
両社の区別はつかないけど、こういった人達は苦手なので、そうそうに通り過ぎようとするが、一人が先回りをして、追い詰められてしまった。
「ねぇ、ちょっと僕達と遊んで行かない?」
「楽しい事しようよ」
「いえ、用事があるんで」
「えー?すっぽかしちゃえ」
「俺らと一緒の方が絶対楽しいし!」
お決まりの言葉にうんざりしながらも、どうやって逃げたら良いのか困ってしまった。
その時、赤信号の向こう側からこっちにむかって叫んでいる影が。
間を通り過ぎる車とその轟音で、何を言ってるのかはわからない。
だけど、その姿には見覚えがあった。
あ・・・朝の・・・
朝すれ違った恰好とは一転、学校の制服を着ている。
それでも目立つ金髪。だけど、明らかに私の方を向き、何かを叫んでいる様だった。