第2章 運命の花びら
それは、ある晴れた朝。
ぎりぎり間に合わずに目の前で閉まった電車のドアを恨めしく見送ったすぐ後に、反対側のホームから到着した人々が降りて来る。
ありふれたその景色を何気なく見つめていると、電車のドアが閉まる寸前、最後の降車客が見えた。
あの制服は・・・秀尽高校?
なら歳は多分、私と同じか一つ違い・・・だと思う。
着崩さずにかっちりと制服を身に着け、ウェリントン形の眼鏡が真面目な印象を与える。
艶のある黒髪は、天然なのかセットしているのかは遠目からは判らなかったけれど、風にその毛先を遊ばせている。
彼の瞳を見た瞬間、心臓が射貫かれたような衝撃を覚えた。
一目ぼれなんて、初めてだ。
そんな事あり得ない、なんて思っていたのに。
眼鏡越しにもかかわらず、固い意志を感じる強い瞳。
静かに燃える炎すら連想させてしまう程に。
じっと見つめ続けていた所為で、視線を感じたのか彼が顔を上げ、ホーム越しに私を視止めた。