第1章 きつねの窓
「え、ちょっ、行く手立てが決まり次第旅立っちゃうって事!?」
「勿論だ」
「怪盗団は!?」
「声が大きいぞ。・・・怪盗団については、ジョーカーがいれば何とかなるだろう」
「そりゃきっとそうだけど・・・」
「しかし、これは相当に難しい。芽衣子、お前も資金調達を手伝ってはくれないだろうか」
「え?何で?」
「当たり前だろう。二人分の旅費ともなると結構な額になるぞ」
「・・・二人分?」
「俺とお前の分だろうが」
「はっ・・・!?」
またも唐突な発言に今度こそ芽衣子は混乱する。
「お前と怪盗団に入ってから、ずっと感じていた。お前が傍に居るとインスピレーションがどんどん沸いて来るんだ。」
「え・・・」
「今の俺はもうお前を手放す事は出来ない。嫌だと言っても連れて行くからな。」
不意に祐介の長く白い指が芽衣子の後頭部を包み込む。
そのまま抱きすくめられ、芽衣子は言葉を失った。
「体温が低そう」祐介の持つそんな印象とは裏腹なぬくもりが芽衣子を包む。
ふと芽衣子は正気に戻る。
抱きすくめられている場所に問題がありすぎたからだ。
コーヒーとカレーの香りが充満するここはルブランの店内。
しかも、カウンター席のど真ん中だ。
「おい。イチャつくんなら外でやんな」
いつの間にかカレーの仕込みを終え、カウンターに戻って来た佐倉惣次郎が呆れた顔でため息を吐く。