第1章 雄英高校入学試験
雄英入学を間近に控えたある雨の日
コスチュームの要望を書いたり、役所に個性届を取りに行ったりとバタバタしていたのがようやく落ち着き、息抜きにと散歩に出ていた。
個性の関係上からか、雨の日は嫌いじゃない。
傘をはじく水の音を楽しんでいると川辺に黒い影の塊を見つけた。
地面に座り片足を放り出しているその人は背格好からして男の人だろうか、フードのせいか分からない。
傘もささず近くにある橋の下にも入ろうとせずただ雨に濡れていた。
水たまりや泥で滑りやすい足元に気を付けながら近づき、その人の隣までいくと高さを合わせるようにしゃがみこむ。
「…だれおまえ」
『雨の日にここに来たくなる気持ち、分かります。』
「は?話聞いてた?」
目線だけ向けられたそれは赤い色をしていて、入試で見た爆破の彼を思い出した。
『何も考えないでいい。川の流れる音と雨の音。それが混じる音。世界がそれだけになったみたいで、何にも囚われない時間。』
赤く染まっている目の奥を見て、心の中でやっぱり。と確信する。
傘を持つ手をそのままに、反対の手を広げる
『…ぎゅーしましょうか?』
「……なにお前、変態?新種のヴィラン?」
最初は無表情だったそれが、だんだんと変わっていくことにクスっと笑みを零す。
『零です。はじめまして。』