第1章 雄英高校入学試験
あのあと鋭ちゃんは、そっか。とだけ言って手のひらをグッと握りしめた。
表情は見えなかったけど、見ようとは思わなかった。
しばらく時間をおいたカラー剤を洗い流すと綺麗な赤色になっていて
すぐには見慣れないかもしれないけど、彼らしい熱意の伝わる色だなと思った。
せっかくならと、持っていたワックスで髪をたたせどんな髪型が似合うかとふざけ合いながら話していると、タッパーに惣菜を詰め込んだ祖母がやってきた。
鋭ちゃんは髪色のことを誰にも言ってなかったらしく、祖母だけでなく彼の母親でさえ驚いた顔をしていたが、男らしくなった。と褒められ嬉しそうだった。
『じゃあ、おばあちゃんと一緒に帰ります。鋭ちゃんママお邪魔しました。』
またいつでも来てね。と温かい言葉をもらい嬉しくなる。
「零、ありがとな。」
きっといろんな意味が込められているのであろうその言葉に微笑むと祖母と一緒に玄関を出た。
辺りは既に薄暗くなりはじめていて、春が待ち遠しく感じる。
『おばあちゃん、これまでずっと私を支えてくれてありがとう。』
雄英に合格したからか、久しぶりに昔を思い出したからか、はたまたその両方か。
ちゃんと伝えておかないとという気持ちになり口から零れるようにして言葉がでた。
祖母はきっとそんな私のことはお見通しで柔らかい笑みを浮かべる。
「零ちゃん、きっとこれから予想もできないくらい大変な毎日が待ってるかもしれない。もしかしたら辛くて苦しくてしょうがない時があるかもしれない。だけどね、これだけは忘れないで。」
「あなたはひとりじゃない」