第4章 一寸混ざった、世界のお話
「手前、コイツ等に姿見せれねえのかよ。このままじゃあ俺が狂ったと思われるじャあねえか」
「君の都合なんて知らなーい」
クスクスと笑う姿も嘗ての相棒にそっくりで、面倒くせぇと思いだした時、狐の耳がピコピコと動いた。
そして、扉の方を向いて、云った。
「丁度良いのが来たじゃないか」
「はあ?」
そう云ったと同時に、バンッと大きな音を立てて扉が開く。
「此処か!?例の鏡は!!」
「一寸待って下さい、××氏!」
ずかずかと這入ってきたのはこの館の主と、突然の来訪者。
突然の来訪者、こと××は中也に気付くと一瞬だけ顔をしかめたが、直ぐに笑顔を作って話しかけてきた。
「此れは此れは、ポートマフィアの!」
「……どうも」
中也は脱帽して一礼をする。
「貴君も例の鏡をお求めで?」
「いいえ。別件で来たのですが折角なので拝見していたところです」
鏡が目的ではないという中也の返しに安堵したのか、××は鏡の方へと向かって行った。
「おお…!!此れが例の鏡!」
そう云って鏡を手に取り、色々な角度から見ている。
その様子を愉しそうに見ている狐を見て、中也は小声で○○に話し掛けた。
「あの鏡は彼奴に譲った方がいい」
「え…」
内容は判らないが、話し声が聴こえていた××は、先に中也が交渉していると勘違いしたのだろう。慌てて鏡を置いて○○の方を向いた。
「いやー実に素晴らしい!是非とも此れを私に譲ってくれないだろうか!」
「…しかし、」
○○はチラリと中也の方を見る。
其れを見て、矢張り先に交渉していたのだと勘違いした××は少し考えて、何かを閃いたように顔をあげた。
「そうだ!あの事業の件、私が手筈を整えようではないか!」
「えっ!?」
「!」
それは、政治家の賛同を中々得られないで保留になっていた案件であった。
あの事業は確か俺達にとっても悪くなかった筈だ。××の人脈を使えば確実に成功し、直ぐにでも軌道に乗るーー……真逆、首領は其処まで見越していらっしゃったのか?
そう思考を巡らせていると、○○と××は本格的に交渉すべく鏡を持って部屋を移動しようとしていた。
そんな二人が部屋から出ていった後、
「何だァ?ありゃあ」
中也は××の後ろ姿に向かって小さく呟いた。