第4章 一寸混ざった、世界のお話
「あの……中也さん」
「何だ?」
チカッ………チカッ……
程よい明るさを提供する光源が、わざとらしい音を立てて点滅する中、歩みを止めない三人。
「鏡の在る部屋が何処だか分かるんですか?」
「否?聞いてねェから適当に歩いてる」
「そうですか」
そう云いながらも、中也は途中途中にある扉の前で止まったりはせずに歩みも止めない。
まるでーーーー
「………、あ?」
そんな話をしていると、ある扉の前を通って……ピタリと歩みを止めた。下袴のポケットに入れていた右手を胸の内ポケットに移動させて写真を取り出す。
ジッと見詰めること約一秒。
「此処だな」
そう云うとノブに手を掛けて、何の躊躇いもなく扉を開けた。
この部屋は窓が無い部屋、物置のようだ。
暗くてハッキリとは分からないが、ダイニングテーブルのような台が1つと、その上に写真に写っていた鏡がポツンと在るだけだった。
三人とも部屋に入る。
「電気はっ、と。あ、おい。扉の右横ンところにスイッチあるから電気つけてくれ」
「あ、はいっ!」
部下その1が電気に手を伸ばしたときだった。
バタン!!
「「「……。」」」
扉が、勝手に閉まった。
「じじじじっ……自分じゃありません!!」
「分かってるから落ち着け」
中也は部下にそう云うと、光源を確保すべく電気のスイッチを押した。
カチッ、カチッ
「チッ、着かねえか」
「ヒィ!ちっ………中也さんっ!!」
「あ?如何した?」
中也は部下の呼び声に応じて振り返った。
鏡の前に白い靄ーーー
それが二人を覆い、息が出来なくなったのだ。
「ぐっ……ぁ!」
「っ!?おいっ!!放しやがれっ!!」
しかし、中也にはハッキリ見えていた。
手足の長い、小さな「何か」が、部下二人の首を絞めているのだ。
「っ!?」
中也は引き離そうと「何か」に手を伸ばした、が。
触れねェだと!?
部下の顔色がみるみる変わっていく。
そして、その「何か」は部下達の口から「何か」淹れているようにも見えた。
中也は舌打ちした。
訳が分からないが、何か良くないことが起きていることだけは確かだと脳が告げる。
中也は小さく息を吸うと、
「よく聞け、狸ィ!俺はーー」
鏡に向かって叫んだ。