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【文スト】対黒・幻

第4章 一寸混ざった、世界のお話


ーーー

「中也はさ、人外って信じる?」

「あ?何だよいきなり」



とある任務前のこと。
その後、正式に相棒になる男を首領の命令で行方を探し、趣味と宣う自殺を阻止すべく水中から引っ張りあげた時。
意識を取り戻したその男の質問に、中也は顔をしかめた。

ただですら任務前の迷惑行為。そのせいで時間も押している上にこの質問ーーー



「中也が考えてることなんて手に取るように分かるけどさ。僕が訊きたいのは幽霊や妖怪の類いを信じているかってこと」

「チッ……」

舌打ちして。しかし、根が真面目な中也は質問の答えを少し考えてから口にした。

「まあ。居るとは思ってる」

その答えを聞くと、相棒こと太宰治は目的地の移動の暇潰しと云わんばかりに話し始めた。


「僕が自殺する度に僕そっくりのヤツと遇うんだ」

「なんだ、夢の話かよ」

「そうなんだけど、一寸違うというか。生死の境に居る時に毎回現れるんだ」

「……それで?其奴の顔が手前そっくりだから死ねるとかそんなやつか?」

「復体の話じゃないよ。ソレと遇うのは場所決まっていて大きな川の石だらけの岸辺でね。奥に小さな舟が一艘あるんだけどその手前の大きな石に座ってるんだ」

「三途の川ってか?」

「もしかしたらそうかも」

「それと幽霊が何の関係があるンだよ」

「関係があるのは幽霊じゃなくて妖怪の方。その僕にそっくりのヤツは僕より少し年上で着物を着ていて、少し声が高い。……それから耳と尻尾があるんだ」

「耳と尻尾……」

「そう。それも尾は9本ーーーあれが『九尾の狐』なんだろうか」

口元に手を当てて考える素振りを見せる太宰。


「ふぅん。で?その狐野郎がなんだよ」


もう少しで目的地に着くこともあり、中也は太宰の話の結末に興味があるのか先を促す。


「そのヒト?はね。何時もならば『全く困ったヒトだ』とか『またかい?』と苦笑しながら云うのが少しだけ会話をするのが常なのだけど今日は違った。第一声が『漸く会えたね』って……」


今の話を聞いて、太宰が疑問に思っていることを中也は正しく理解した。


「漸く会えた?誰にだよ」


考えているのか。
少しの間、会話が途切れる。


そして、





「考えてみたんだけどさ。ここ最近出会ったといったらーーー」



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