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【文スト】対黒・幻

第4章 一寸混ざった、世界のお話



「おい」

「「はい!」」

「今のは聴こえたか?」

「「………。」」

中也の問い掛けに部下は口をつぐむ。


矢っ張り俺にしか聴こえてねえ、ってか。



そんな確認を部下達とした時だった。



ガサガサガサッ



「「「「「!?」」」」」


森の茂みが音を立てて揺れる。
反射で部下達が懐に手を入れ、銃器を取り出して構えた。

「止めろ」

「「!」」

其れを中也が制止する。
部下達が少し躊躇ってから銃を仕舞う事をきちんと確認した程のタイミングで、茂みの音を立てていた犯人がヒョコッと姿を現した。


「犬……否、狐……ですかね?」

「この森に狐が居るなんて聞いたことがないですけど……」


部下の問いに○○氏が答える。

狐は静かに此方を。
否、「中也」をジッと見つめているーーー


「……ついてこい、ってか?」


中也がそう云うと狐は左の道の前に移動した。

それに中也が続くと、先程と同じ様に慌てて4人が追い掛けた。



そして僅か十数分で。


「………着いた」


別荘のある、開けた場所に出たのだった。

「良かった……」

「もっと森を彷徨う事になると思ってたから……中也さん?」


今までで一番キョロキョロしている中也に部下達が声を掛ける。

「居ねェ……」

「「え?」」

「此処まで連れてきた狐だよ」

そういえば、と部下達も辺りを見るが姿どころか気配もなかった。


ーーー


「直ぐにお茶を用意しますのでゆっくりして下さい」


客室に案内されて、中也は部下達に声を掛けてフカフカのソファに腰掛けた。


「なんか来るだけで疲れてしまいましたね」

「俺、怪奇現象なんて初めて体験しました」

「俺もだっつーの」

「にしてもあの狐、何だったんですかね」

「もしかして、あの狐が化かしてたとか!」

「止めろよ……そんな気がしてくるだろ」

「……狐なァ」


部下達の会話を聞きながら中也も狐のせいではないかと考えた時だった。

そういやァ……


「中也さん?急に黙り込むの止めてくださいよ」

「また何か聴こえるんですか?」

「ああ、悪ィ悪ィ。狐で思い出したことがあってよ」

「「何をですか?」」



「……昔、相棒だった奴が居るンだけどよ」


それは存じています、なんて云えず部下達は中也の話を静かに聞いた。
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