第4章 一寸混ざった、世界のお話
「そうか……悪ィ。早いとこ向かうとするか」
そう返して、○○氏をも置いて歩きだした中也に4名が慌てて続いた。
しかし、聞き間違いなんかではないことを中也は確信していた。
何故ならーーー
『間違いない?』『間違いない!』
『彼の子だ!』『彼の子が還ってきた!』
そんな会話のような声が、今でもぼんやりと聴こえているのだ。
俺にだけ聴こえている声………異能か?
そう考えながら眼だけで辺りを警戒する事を忘れない。
『異能?』『異能??』『異能ってなぁに?』
「っ!?」
心を読まれた……だと?
あ?……そういや此処……
その同様と、周囲を窺いながら歩いたことで気付いたことで再び足を止める。
「……中也さん?」
「あの……大丈夫ですか?」
森に入ってから様子が可笑しい中也に部下も心配の声をあげる。
「………この森、なんか見覚えがあンだよな」
「「「「えっ」」」」
そう云うと再び歩きだした中也を、○○氏が止めた。
「中原さん!其方ではありません!!」
「あ?」
○○氏が此方ですと示した道の方が明らかに今まで進んできた道の延長だが、中也の向かった方にもよく見ると人一人が通れそうな小路がある。方向からすれば中也の通ろうとした道の方が館の方向であるが。
先程の怪現象を体験した部下2人は迷いなく○○氏の後ろに着いていっている。
「此方の方向だろ?」
「確かにそうなんですが、直ぐに分かれ道になっていて迷ってしまうんです」
「……また『迷う』、か」
そう云うと中也は細道の方に歩み出した。
「あっ!一寸!正気ですか!?」
「「中也さん!」」
慌てて4人がその後を追う。
そして、そう歩かない内に○○氏の云う分かれ道に差し掛かる。
「方向からすれば左に進むべきなんですが……」
「どうせ右に進んでも迷うンだろ?」
「はい……最低でも2、3時間…日が暮れるまで迷うこともあります」
其れを聞きながら、中也は懐から写真を取り出した。
「此れの場所に行きてェ」
そう、分かれ道の前で呟いた。
『やれやれ。やけに騒がしいから何かと思えばーー』
「!?」
今まで聴こえていたモノとは明らかに違う、ハッキリ聴こえてきた声。
しかし、何処かで聴いたことのあるようなーー。