第4章 一寸混ざった、世界のお話
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陽はまだ高いお昼時。
中也は部下二人を連れて○○氏の別荘ーーー
ではないようで、○○氏に指定された場所へ向かった。
「中也さん。着きました」
「……おう」
部下の声に、中也は先程、首領から渡された写真を懐にしまい車から降り、辺りをぐるりと見渡す。
「招待しておいてこんなところを指定するなんて可笑しいですよね」
引き連れてきた部下2名の内、一名が同じ様に辺りを見渡しながら中也に話し掛ける。
指定された場所は森の中へ続く途中。
しかし、未だ先まで行けるような……車が走れる道はきちんと整備されている。
「だが、車の停車跡も結構ある場所だから此所が駐車場なのかもな」
「しかし、彼処ですよね?少ししか屋根が見えないですけど」
「客人を招くにしては遠すぎではありませんか?」
「まァ、そうだな……」
「「……?」」
周囲を窺っていた中也が、森の方ーーー
ある一点を見詰めながら返事した事に、部下達は首を傾げる。
そんな時、自分達が今しがた来た方向から車の音が聴こえてきた。
中也達の車の横に停車すると、運転手と○○氏が慌てて降りてきて中也達に駆け寄ってきた。
「お待たせしてしまい申し訳ありませんっ……」
「「……。」」
部下二人は○○氏を僅かに睨み付けたが、中也は未だ先程のところを視たまま反応しない。
「……あ、あの……っ」
「!、悪ィ。聞いてなかった」
「いやっ、お待たせしてしまい申し訳ありません」
「ああ、いや。此方も今来たところだ」
「そうですか………」
返事がなかったことが遅れてきたことで怒らせてしまった訳ではないことに少し安堵しながら○○氏は恐る恐る口を開いた。
「あの……此処に来るまで迷われませんでしたか……?」
「否?……一本道だっただろ?」
「一本道でしたか……それなら良かったです」
汗を吹きながら中也と話す○○氏に中也の部下達は
「何云ってるんだ?」「さぁ?」等と小声で会話する。
「……少し距離があるんですけど此所からは歩きになります」
そう云って○○氏が向かったところは、奥に建物が見えている車も通れそうな道ではなく、車は通れそうにないが人が歩ける程度に開かれた森の入り口ーーー先程、中也が見詰めていた場所だった。