第4章 一寸混ざった、世界のお話
「引き受けて呉れるね?」
「拝命致します……が、1つ宜しいでしょうか?」
「何かな?」
一礼し、そして言葉を繋げた中也を笑顔でみながら返事をする森。
「贔屓にしている、と云えどフロント企業の一派に過ぎません。態々、首領が力添えするに値する何かがおありなのでしょうか?」
「ほう」
机に両ひじをつき手を組んだーーー若干眼を細めた森に対し、中也は続ける。
「ここ最近の情勢や内情を必死に思い返してはいますが心当たりが無く……不躾な質問で申し訳ありません」
そう云い終わると中也は先程よりも深く頭を下げた。
森は「ふふっ」と笑って中也に頭をあげるように促す。それに中也が従ったところで口を開いた。
「中也君の見解は正しい。この件に関して私が態々、口を挟む意図は『存在しない』」
「……。」
中也の眉がピクリと動く。
其れは即ち、今から新たに『存在する』ことになるからか。そうなればあらゆる可能性を視野にーーー
「理由を挙げるとすれば『鏡の写真』かなぁ?」
そう、鏡の写真も視野に入れて行動を大切に………っ
て………は?今なんて?確か………
「………鏡の写真?」
あらゆる可能性を脳内で巡らせていた中也は、言葉を放つのに一瞬の間を要した。
「そう。先刻中也君にあげたモノだよ。其れを昨日の会合で見たときから何故だか判らないけれど気になっていてね。其の写真の持ち主が偶々○○氏だった、それだけだよ」
「そう、ですか…」
それから別荘の場所や訪問の日取りを聞き、中也は首領室を退室した。
其れを見送ったあと、突如現れた少々が口を開いた。
「いいの?ワタシが云ったこと、チュウヤに教えなくて」
「最後まで伝えるか悩んだんだけどねえ…」
森は苦笑しながら息を吐いた。
「私が伝えずとも中也君にはエリスちゃんが視えていたモノと『同じモノが視えていた』ような気がしたから」