第3章 一寸先の、未来のお話
「恐らく『異能を譲渡させる事が出来る人間』は元政府の人間だ。表だって処分することが出来ないーーーとなると」
「……真逆………始めからマフィアに始末させるために……」
「異能特務課が絡まなければ口封じをしたい政府の人間なんてこのような手段に出るものさ」
「太宰、貴様!最初から知っていたな!?」
「私も途中で気付いたのだよっ。武器密売組織の壊滅に、初めマフィアは動かなかったからね」
「しかしっ……助けることは出来ただろう!?」
「たとえ今回助けたとしてもマフィアに喧嘩を売ったことには変わりない。永遠に護衛し続けるわけにはいかないだろう?」
「貴様の妹だろうが!何とかなったんじゃないのか!?」
「ならないよ。生憎ね」
「何故っ!?」
「あんな風にしていたけど紬はマフィアの首領ーーーどんなマフィアよりも残忍残虐の考えの持ち主だよ?仕事に口を挟むことは不可能だ、お互いにね」
「……っ!」
太宰の云うことは尤もだ。
口を挟む事が出来るならばポートマフィアなんてとっくに壊滅できていただろう。
『ねえ、太宰妹』
『何でしょう?名探偵さん』
『ーーー国木田には無理だ』
『判っていますよ。それは此方側が請け負います』
『君はそれでいいの?』
『構いませんよ。我々はマフィアですから』
国木田の脳裏に作戦に参加する前の乱歩と紬のやり取りが過る。
最初から判っていたこと、だったのだ。
「乱歩さんは敦君の異能奪還を優先した。でなければ、次は他の探偵社員の異能が奪われることを『知っていた』から」
「………そうか。」
無理矢理納得したように、小さく呟いた国木田に太宰は次の声を掛けることなく敦の手伝いの方へ向かったのだった。