第3章 一寸先の、未来のお話
「いや~お疲れ様」
紬がゆっくりと近付いて背の「低い」方の男に触れた。
ぽうっ、と光って消える。
「ああ……まだモノにしてない異能がァ……!!」
「手前が奪った異能はどっちのだ?」
ゴリッと銃を突き付けられてヒィ!と小さく悲鳴を上げ、ガタガタと震えながら口を開いた。
「探偵社のッ……虎の異能ですッ!!」
「手前の相方は幾つ異能を奪える?」
「両手分ッ………二つだけですッ!!」
「もう一人の奴は」
「一つだけですぅ!!」
「何故、異能で対抗しなかった?」
「そのっ……!異能がッ云う事をきいてくれなくてッ……聞いてた通りの力……出なく……」
中也の尋問にアッサリと白状する男。
「敦君の異能は敦君でなければ力を貸さないようだね。折角盗んだのに残念だねえ」
紬は背の引くい男に触れ続けながら云う。
「太宰妹も同じ無効化の異能だったのか」
国木田の問いに紬はニコリと笑うだけだった。
「!国木田、代わッてくれ」
中也が何かに気付いて国木田に云うが人に銃を突き付けることだ。勿論、躊躇った。
「私が代わろう。中也が傍にいないなら、触れておく必要がないからね」
「……有難うございます、首領」
中也と同じように懐から銃を取り出して、男に突き付けた瞬間、中也は作業員達に向かって走り出した。
話している間に、奇襲をかけようとした人間がいたのだ。
そんな連中を片付けるためにその場を離れた中也の戦闘力に脅える男達。
「こんなに脅えるくせに我々の組織を乗っ取る心算だったのかい?」
「いやっ……侵入者がっ……そっちに異能者を……!」
「ふーん。「殺さなければ異能の譲渡ができない」のは本当かい?」
「!そんなことまでバレっ……あ!」
慌てて口を押さえる男に紬は小さく息を吐く。
「……本当によくそんなので私達の社を乗っ取ろうと考えたものだ」
凡ての人間を殺さずに気絶させる事に不馴れな中也であったが、それでもあっという間に片付けたのだった。