第3章 一寸先の、未来のお話
作戦はシンプルだった。
国木田、紬、中也が囮側として。
敦、芥川、太宰が異能を取り戻す側として××に潜入する。
殺さなければ譲渡できないならば「異能を奪った人間」、「異能を譲渡する人間」、「異能を受けとりたい人間」の最低四名が敦達の元へ来るべく、他の人間を引き付けて始末するために中也が社長と首領の護衛ーーー太宰の異能無効化で異能の奪還が目的の。紬の立てた作戦だ。
一同、それに頷くと早速準備を始めたのだった。
ーーー
国木田は真新しい工場を見上げて眼鏡の位置を正した。
「此処が××なのか?」
「そ。まだ新しいだろう?わざわざ隠蔽に向くように建て直したようだね」
「……そうか。して、潜入方法は?」
「勿論ーーー私達は正面突破だよ」
「何!?」
「……。」
ニッコリ笑って紬云うと国木田は驚く。
そう云われることを悟っていたのか。中也は乗り付けていた車のトランクを開ける。
中に入っていたのは大きな麻袋だ。
「何だ?それは」
「私達が正面からいくに値する『理由』になるものだよ」
中也はそれを軽々と担ぎ上げる。
「何時でも行けます、首領」
「そう。じゃあ早速行くとしよう。君もしっかり武装し給え」
「あ、ああ」
そう云って歩き出した二人に、国木田は慌てて続いた。
シャッターを中也が蹴り破り、数歩。
中で作業を行っていた人間が「誰だ!?」と突然の訪問者に問うてきた。
「手前等の出した塵だ。返すぜ」
紬と国木田より数歩分先に進んだ中也は麻袋を投げ棄てて云った。
地面に転がった麻袋は、突然モゾモゾと動き出す。
「!?」
それに国木田を始め、作業していた連中が驚く。
麻袋の縛り部分が解け、中から出てきたのは猿轡を嵌められたボロボロな状態の人間。
ーーー首領室で捕らえられた偽首領だった。
「よくもまあ堂々と来てくれたなァ。礼を云いたいから責任者出してくれよ」
「おい、あれは何だ!?」
ザワつく周りと同様に国木田が出てきた人間の有り様を見て、小声で紬に話し掛ける。
「アレは私が女だと知った途端に殺しにきた××の間諜だよ」
「間諜…」
間諜と聞いたため、あの状態であることに納得すると同時に生きているだけ『まし』だと、国木田もそれ以上は何も云わなかった。