第3章 一寸先の、未来のお話
「どうやらその組織に元々居た異能者が厄介でね。譲渡させる条件が『元の人間を殺す』ことのようなのだよね」
「「!?」」
「今奪われている異能は二つーーー芥川君と、其方の人虎君。今のところはこれ以上の被害は出ることはないが二人を殺す最適の機会を狙っているのは事実」
「!」
「……。」
何度目かになる紬の爆弾発言に心当たりがあるのだろう。敦と芥川がピクリと動く。
異能力を保持している者の殺人の理由と犯人ーーーこれで説明がついたのだ。
「新双黒として名をあげすぎたようだねえ」
「その様だねえ」
太宰が顎に手を当てながらそう云うと紬も苦笑しながら云った。
「しかし、そんな力を得て何が目的なんだ?」
「ウチとポートマフィア、両方の乗っ取りでしょ」
「「「「!」」」」
国木田の質問に乱歩がアッサリと答える。
「そこで共同戦線、と云うわけか」
「そう云うこと。悪くないだろう?」
ニッコリと笑って云う紬に少し無言になる国木田。そして、太宰を見る。
「太宰、作戦に参加する気は」
「勿論、あるとも」
「敦」
「これは僕のーーー『僕達』の問題ですので参加します」
その言葉を聞いて国木田は大きく頷いた。
「戦闘向きでない異能力者の参加はあまりお勧めできないよ。今は二つ奪われているとはいえ相手は『新双黒』、それに本当に二つしか奪えないのかも不明だ」
「貴殿達は何人動く?」
「今居る三人だけ。不在の間に本部を奇襲されても困るからね」
「そうか…。では此方も敦と太宰、それと俺が参加しよう」
「何云ッてんだい!社長が動くのは反対だよ!」
「僕も反対です!」
「……。」
与謝野と谷崎が反対意見を述べると乱歩が少し考える。
「ねえ、太宰妹」
「何でしょう?名探偵さん」
「ーーー国木田には無理だ」
「判っていますよ。それは此方側が請け負います」
「君はそれでいいの?」
「構いませんよ。我々はマフィアですから」
「そう。それなら国木田は参加した方がいい」
「「「乱歩さん!?」」」
乱歩の一言で全員が思わず声をあげるが、乱歩の云うことは基本、覆ることがないことも探偵社の全員が分かっていることだ。
「目的がこの社なら囮としては最適だ」
「「「……。」」」
これで参加するメンバーが決まった。