第3章 一寸先の、未来のお話
「中也、止めて」
「探偵社のやり取りです。口を挟むのは如何かと」
「国木田。其処までにしておけ」
困っている所に鶴の一声が。
江戸川乱歩だった。
「しかし、乱歩さん。社の守秘義務違反です」
「いい。どうせこうなることが判っていたんだ。お互いの情報提供は必須事項だった」
「……乱歩さんがそう仰るのなら」
漸く国木田が太宰を解放した。
「色々面倒掛けるんじゃねえよ、莫迦」
「忠犬なんだからもう少し早く助けられたでしょ!?」
「犬じゃねえよ!犬だとしても手前の犬じゃあねえ。手前の事くらい手前でどうにかしろ!」
今度は二人がギャーギャー云い合いが始まった。
「治、中也」
しかし、紬が名前を呼んだ途端にピタリと止める。
「失礼しました、首領」
「ホント、失礼だねっ」
「……治」
「はい、黙ります」
三人の力関係に探偵社全員が「ほぉー」や「へぇー」と感嘆の言葉を上げた。
「済まないね、話が断線してしまって」
「いや、此方も済まなかった」
トップ同士が謝罪を済ませた後に紬が話を続けた。
「話を戻そう。君達にきた依頼『密売組織連続奇襲』の犯行組織の名は××」
「「「「!?」」」」
乱歩と太宰以外の探偵社員が驚く。
「既に其処までに判っているのか」
「此方にも少し損害が出たからねえ。調べるのは当然だよ」
「流石だな」
「ここ最近できたばかりの組織なんだけどね。出来たときから云われていたのが、異能力者が数名居るということ」
「…そういうことか」
紬の話を聞いて乱歩が凡てを悟ったように云った。
「一体、如何いうことですか?」
敦が乱歩に訊くが面倒臭そうに「えー」と云った。
「その異能者の中に『他人の異能を奪える異能』を持っている、と云うことだよ敦君」
代わりに太宰が答える。
「そして最悪な事に『他人に譲渡する』ことができるようなのだよね………異能か、或いは正規の手段かは知らないけどね」
「異能の譲渡だって!?そんな事が出来るッて云うのかい!?」
「出来るか否かだけでいいなら出来ると断言できる。しかし、特務課の中でもトップシークレットに入る部類だろうから詳しくは知らないけどね」
途中で鏡花がピクッと動いたが、その事には触れずに紬は続けた。