第3章 一寸先の、未来のお話
一通り驚き終わり太宰が紬を隣に座らせる。
「君達も座り給えよ」
太宰が椅子を勧めると芥川がチラリと中也を見る。
「座れ、芥川」
「……御意」
中也の指示で少し躊躇いながらも紬の隣に座る芥川。
「早速だけど続きをいいかな?」
ニコッと笑って紬がそう云うと中也が懐から紙を取り出した。
「逮捕歴のある66歳の男は『鍵を自在に開けられる異能』の持ち主だった」
「「「!?」」」
淡々と用紙に書かれたものを読む中也の情報に驚く探偵社達。
「二件目の暴走族……となっているようだが此方がジジイより先に死亡している。彼奴は『他人の特技を奪う異能』」
「三件目の女は『電子機器を意のままに操る異能』ーーーまあ電網破りだな」
「四件目は『火を操る異能』の持ち主だ」
先程の情報に重要事項を付け足すような形で報告書を読む中也。
「この二番目の暴走族の異能が手前等の『異能』を奪ったと考えていいだろう」
「「「「「!!」」」」」
先刻までとは違う情報量に驚く一部を除く探偵社。
「成る程ね。しかし、それならその『異能を奪う』人間は二人居ないと成立しない。辻褄が合わないけど?」
乱歩がラムネを飲みながら中也に向かって云う。
中也はその質問に困っては居なかったが、チラリと首領である紬を見た。
紬は小さく息を吐くと、中也に代わって口を開いた。
「君達にきている依頼は『密売組織連続奇襲』の解決なのでろう?」
「……なぜ此方側の情報を知っている」
探偵社の同じ立ち位置である国木田が眼鏡を直しながら云う。
「勿論先刻、治から聞いたとも」
「だ~ざ~い~~貴様~~~!!」
ニッコリ笑って云うと国木田は予想はしていた人物に怒鳴った。
「いやーだって紬が可愛く訊いてくるから、つい」
「つい、ってなんだ!ついって!貴様の妹の所属は敵対組織だろうがぁあ!」
「痛っ!いたたたた!!!御免って!国木田君!ご免なさい~!!!」
そんな二人のやり取りに紬が機嫌を損ねたのが直ぐに分かった中也は溜め息をつく。