第3章 一寸先の、未来のお話
「谷崎、続けろ」
「は、はいッ」
敦が持っていた資料を国木田に渡したところを確認してから谷崎は再び話し始めようとした時、賢治がはーい、と挙手する。
「質問良いですかー?」
「うん」
「僕達は政府から『密売組織連続奇襲事件』の捜査依頼を受けているんですよね?それとこの殺人は関係あるんですか??」
「妾も理由を聞きたいねェ」
賢治の質問に与謝野が加担し、敦や鏡花もコクコクと首を振る。
「それが、直接関係あるか未だ判らな「あるとも」ーーーーえ?」
「「「「「!?」」」」」
突然、高い声が谷崎の言葉を遮った。
その声の方を全員が注目すると、いつの間にか4人の人間が会議室の中に這入ってきた。
「太宰さん!?」
「やァ、敦くん。お早う」
ニッコリと笑って挨拶を述べた太宰よりも、その後ろに控えている人物を見て驚きを隠せなかった敦はガタンと音をたて、勢いよく立ち上がった。
それに続くように、静かに立ち上がる国木田。
それを回りが黙って見ている。
張り詰めた空気が一瞬にして会議室を包んだ。
「ご苦労だった、太宰」
「いいえー」
国木田の言葉で、太宰の連れてきた3人が『招かざる客では無い』ということに気付き、空気が少し緩和された。
「芥川と、中原。そしてーーー貴殿が太宰の妹か」
「うふふ。こうして顔を合わせるのは初めましてだね探偵社社長、国木田独歩殿」
握手を交わそうと国木田が手を差し伸べようとしたが、間に中也が割り込み、其れを遮る。
「悪いが親交を深めに来たんじゃ無いからな」
「『太宰の妹』としては挨拶出来んのか」
「そりゃあ尚更、認めねェよ」
ハッと笑いながら云う中也に紬は小さく息を吐いて兄の方に視線を寄越した。
その意図を汲んだことを表すように太宰も小さく息を吐いて口を開いた。
「まあまあ社長。このチビッ子幹部のことは多目にみて下さい。ポートマフィアの首領自らが動くとあって警戒心が増してるんです」
「「「「っ!?」」」」
誰がチビッ子幹部だ!と云う叫び声が会議室に響き渡る事よりも、大事なことをサラリと云った太宰に注目が集まる。
「太宰さんの妹さん…首領…!?」
ザワつく皆にキョトンとした顔で首を傾げる太宰。
「あれ?云ってなかったっけ?」
全員に全力でツッコミを入れられたのは云うまでもない。