第1章 一寸先の、宝物のお話
「しっかりもってなきゃだめだぞ!」
「あ………うん」
はい、と。
ニカッと笑いながら太宰に向かって袋を差し出すふみやから袋を受け取る太宰。
似ている………。
嘗て「相棒」と呼ばれた男にそっくりだ、とふみやをみて思い、
「ふーくん、すごい!」
パチパチと手を叩いてふみやを誉めるしゅうじは自分にーーーいや、違う。
「自分の片割れ」に似ているのだ。
「真逆…………そんな筈………が…子供を産むなんて………」
「「……ぱぱ?」」
太宰が一人でブツブツ云い始めると、只事ではなさそうな雰囲気を探偵社の皆が悟り、子供達も心配し始める。
「太宰、僕のラムネ!」
「!」
そんな空気を壊したのは、乱歩だった。
乱歩の声で戻ってきたのか、太宰が手に持っていた購い物袋を乱歩に渡す。
「太宰」
「……何でしょう」
受け取ったラムネを開けながら真剣な声音で太宰の名を呼ぶ乱歩。
「お前が思っているような事じゃない」
「!」
太宰の様子が可笑しいことに気づいた他の社員達が、子供達の気を引くように話し掛け、太宰と乱歩から子供達を遠ざけた。
春野が紙の束を持ってきて、与謝野が国木田に半ば強引に色鉛筆を作らせ、其れを使ってナオミや敦が一緒に絵を描き始める。
そんなやりとりをぼんやり見ている太宰。
「太宰、彼の子供はーーー」
突然、
うわぁぁあん!!としゅうじが大声で泣き始めた。
何故泣き始めたのか理解できないナオミ達が慌て始めるより早くーーー
「っ!」
太宰はしゅうじに駆け寄り、抱き上げたのだった。
その行動にふみやと乱歩以外の全員が驚く。
太宰は何も云わなかった。
しかし、直ぐにしゅうじは泣き止んだ。
「ーーーーー間違いなくお前の子供だよ」
その光景を観ながらポツリと呟かれた乱歩の言葉が聴こえたものは誰一人としていなかった。