第3章 一寸先の、未来のお話
意識的か無意識か。
組織の誰よりも考慮されている首領……
否。紬の考え方に中也は反論することなど出来るわけが無かった。
余計な事を云い返せば口論に発展することが目に見えているというのもあるが。
大切に思われてる事は悪い気はしないからなァ。
組織全体の存続に関わるようであればこうは云ってられないが、そんな事、中也に指摘されずとも首領なら判っているだろう。
ーーーそんな時は『私情を挟まず命令を下す』ことも。
「……ハッ。報告書ちゃんと読んでて何よりだ」
「うん。だから夕飯に日本酒も付けて」
「チッ。判ったよ。で?如何すンだよ。芥川だって弱かねーが、普段の戦い方じゃねえから無理はきてるぞ」
裏を返せば、今案件は面倒なことになってはいるものの切羽詰まった状況では無いということだろう。
それだけではない。
この首領には既に物事の顛末まで視えているのかもしれないーーー。
「……。」
「?」
そう思ったが、首領は額に手の甲を置いて考える動作を取る。
無言になった首領に首を傾げる中也だが、大人しく次の言葉を待った。
「あ、そうだ!」
「うぉ!?」
突然、ガバッと起き上がる首領にビクッとなる。
「ちゅーやー」
あ、碌なコト考えてねェな。
随分と昔から見ている「悪巧みをしている時の表情」を見ながら中也は深い溜め息を着いた。
「……何だよ」
「うふふ。あのねーーー」
この手の予感は必ず中る。
愉しそうに話す紬の話を聞いて、中也は頭を抱えるのだった。