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【文スト】対黒・幻

第3章 一寸先の、未来のお話


紬の身体をペタペタと軽く触りながら確認していく中也。

「なぁに?怪我なんてしてないよ?」

「当たり前だ。傷付けられてンならとっくに彼奴を殺してる」

「…忠犬過保護」

「忠犬ハチ公みたいに云うな」

一通り確認が終わったのか。中也が安心したように息を吐く。

「そうだ。これ片したら夕飯、手前の好きな蟹料理手配してやるよ」

「蟹!どうしたの中也!?やけに優しいじゃあないか!」

パアッと喜んで後ろから抱き着く、と云うよりのし掛かる首領。

「偶には労ってやろうと思ってよ」

「ふーん。……優しすぎて逆に怪しいねぇ」

「……。」

そう云うと紬はチラリと机を見る。
そして、先刻中也が置いた書類を手に取った。


「ーーー嗚呼、そう云うこと」


見ていたのは1分弱。それでも凡てを理解するには充分な時間だったようだ。
書類に興味がなくなったのかポイッと放って部屋に置いてあるソファにゴロンと横になる紬。

「オイ寝んな。仕事溜まってンだよ」

「中也が代わりにサインしてくれたら良いよ」

「阿呆抜かせ。そっちに運んでやるから目を通せ」

そう云うと先刻の書類をはじめ、机に乗っていた凡ての書類をソファ前のローテーブルに積み上げる。

「やる気出ないー」

「だから蟹料理手配してやるって云ってるだろ」

「何で任務を失敗した芥川君や樋口君には優しくするのに私には優しくしてくれないのー!?」

「充分甘やかしてやってンだろーが!」

そう云いながら中也が書類を小積み、ソファに座ると直ぐに膝の上に頭を乗せてくる。

ーーー撫でろってことか。

云いたいことを瞬時に理解した中也は、未だに機嫌が治らない首領の頭を撫でてやった。

「俺も動いた方が良いんじゃねェか?」

「………中也は駄目」

「何でだよ」

「万が一、中也の異能を『奪われた』ら被害が大きい」

中也の異能がもたらす破壊力は強大。
そして、その持ち主だってそう易々とやられたりするわけがない。
しかし「負けるかもしれない」と云う意味を含んだその言葉に、中也は苛立つ事はしなかった。

そうなった場合、芥川が不可能な今。
対処できる人間は紬か、彼の師匠でもあり姐のような存在である紅葉となる。
組織の事を考えれば紅葉が動かざるを得ないが……正直、厳しい結果になるだろう。
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