第3章 一寸先の、未来のお話
人々の疲れを写すかのように太陽が最後の頑張りを発揮する時間ーーー
「はあー……」
白い青年が盛大に溜め息を着く。
「見付からなかったね」
「うん」
その隣を歩く着物の纏った女性がポツリと云った言葉に返事して顔を上げたのは武装探偵社の社員である中島敦だ。
「身体は大丈夫?」
「大丈夫だよ。でも…」
「でも?」
どこか少女の面影が残る女性こと、同じく武装探偵社員の泉鏡花は首を傾げながら敦を見上げる。
「矢っ張り『彼奴』のお陰だったんだなぁーって思って」
「?」
回答の意味を理解できずに疑問符を浮かべる鏡花に敦は苦笑する。
「日常生活をする上じゃ何も問題無いんだけどね。ただ………普段ならもっと先まで見える眼も、皆が聴こえない程の小さな音を拾う耳も『彼奴』のお陰だったんだなって思うと……」
何だろうこの気持ちは。
言葉に出来ない。
そう思った瞬間に
「ーーー寂しい?」
「!」
そう紡がれた言葉に敦はハッとした。
そうか。
『寂しい』………かもしれないな。
答えが見付かったことと、自分がしなければいけないことを再確認した敦はポンッと鏡花の頭を撫でた。
「!」
「有難う鏡花ちゃん」
「……うん」
ニコッと笑って云う敦に返事をすると2人は社へと向かって歩き出したのだった。