第3章 一寸先の、未来のお話
魔都ーーー横濱。
人々とは反対に月が活動する時間ーーー。
「逃がすな!!追え!!」
そんな月の活動時間が生活基盤の。
この地の暗部で生きるもの達は、今日も今日とて命のやり取りを繰り返しながらこの街の秩序を保つために暗躍する。
「此方には居ません!!」
「此方にもです!」
「なっ…!?」
暫くして、飛び交う怒号と銃声が収まる。
「そんな真逆!空間転移でもしなければ逃げられるなんて…!」
構えていた銃を下ろして嘆いた声は女性のものだ。
その女の周りに黒のスーツを纏った男達が集う。
「失敗するわけにはいきません。捜しーーー」
コホコホ…
そんな女性の台詞を乾いた咳が遮った。
その音をもたらした男に対して黒尽く目の男達が一斉に頭を下げる。
「あ…芥川先輩……」
「無駄だ樋口。既に気配が無い」
「っ……!」
グッともっていた銃を握りしめた樋口の後ろに現れた男ーーー芥川。
何時も羽織っている黒の外套が所々破けて、
頬に一線の赤い筋が入っている姿を見て樋口と呼ばれた女性は唇を噛み締めた。
「退くぞ」
芥川がそう云うと一斉に「はっ」と声を上げて男達が動いた。
「……。」
俯いてしまって動かずにいる樋口に芥川は小さく息を吐いた。
そしてその頭をポンと叩く。
「!?」
「行くぞ。呆けるな」
「はっ…はい!」
樋口はバッと顔を上げると、先に歩き出してしまった芥川の背中を慌てて追ったーーー。