第2章 一寸前の、黒が欠ける前のお話
「ぅー……」
翌日の早朝と云える時間帯に紬は漸く目を覚ました。
身体のあちこちが痛むためゆっくりと寝返りを打つ。
そして
「………何してるの?」
少し掠れた声で、一番に目に止まった光景に対して質問を投げ掛けた。
寝返りを打った先、ベッドの端側に太宰と中也が並んで座っていた。
勿論、正座である。
「「おはようございます」」
「……おはよう」
土下座で朝の挨拶を述べたまま、顔を上げない二人を紬はボーッとした顔で見ている。
「……で?何してるの?」
再度同じ質問を繰り出すと二人はビクッと肩を震わせ、同時に横を向き、顔を見合わせて意を決したように小さく頷く。
そして、
「「申し訳ありませんでした!!」」
「……朝から五月蝿い」
全力で謝った、のだが。
声の音量に苦言を呈した紬は頭まですっぽりと掛け布団を被ってしまった。
「おい、如何する!?」
「如何するって、中也も考えてよ!」
「何も浮かばねえから聞いてンだろ!」
「僕だって同じだ!」
昨日のようにギャーギャー云い合う二人。
「だから五月蝿いってば」
「「はい、済みません!」」
しかし、布団の中から発せられる声には瞬時にしたがった。
シンッとして、漸く紬が頭だけ布団から出した。
「一体何を謝っているんだい?私の処女を奪ったこと?待ってって云ったのに聞く耳持たずに事に及んだこと?もう無理だって云ったのに止めてくれなかったこと?」
「「………全部です」」
「と云うことは記憶は全部あるわけね」
「「……はい」」
尋問されているかのように答える二人に、紬は一度大きなため息を着いた。
「……私とヤッた事を後悔してるの?」
「「それは全く」」
「即答ですか」
はあ、と再び息を吐く紬。
「ゴムも無しに散々中に出したんだから、喩えどっちの子を身籠ったとしても二人で責任とってくれるんでしょ?」
「「それは勿論」」
正座したまま再び即答した二人。それを聞いて紬はふわりと笑った。