第2章 一寸前の、黒が欠ける前のお話
「じゃあ別に如何こう云うことないや。身体が痛いからもう少し寝る。二人のせいなんだから勿論何でも云うこと利いてくれるでしょ」
「「えっ……あ、はい」」
アッサリと許してくれた事に拍子抜けしつつも嫌われなかったことに安堵し、更に機嫌を損なうことがないように大人しくベッドから降りる二人。
「「……。」」
顔を見合わせて少し考え、何かを話そうとするも紬にまた五月蝿い等と云われてはいけないと考えたのか二人揃って部屋から出たのであった。
出た先は勿論、太宰の執務室。
職務に関係ない話をしても誰もとがめるものが居ない場所。
「あのさ」
「あのよ」
設置されているソファに座ったところで二人同時に口を開いた。
再び口論になっては紬が………ってことで中也が太宰に先に話すよう促した。
「……僕達は実の兄妹だけどそんな事関係無しに……紬を手離すことなんて考えられないから」
「判ッてる。でも俺も彼奴から手を引く気は無ェよ」
「「……。」」
思っていることを云い終わると暫く無言が続いた。
「紬は『僕達』を受け入れた」
「あ?」
それを先に破ったのは太宰だった。
「僕達は三人で一つだ。先刻、紬に二人で責任をとると誓った」
「……何が云いたい?」
「紬の異能の事を知っていたのは首領と僕だけだった。それを中也も知った。今までは僕だけが紬を守っていたけど此れからは中也も何があっても紬を守って。今回みたいな虫が付かないようにだけじゃなくて暴走したりしないように内面的な部分もちゃんと」
「……約束する」
そう云うとコツン、とお互いの拳をぶつけ合って誓いを立てた。
「抜け駆けは禁止だからね」
「そりゃ、俺の台詞だろーが」
こうして二人は紬を守ることとお互い抜け駆けだけはしないように誓いを立てた。
「あと、機嫌が悪いと色々と大変だからこういう風になった場合はきちんと紬の我が儘をすべて聞くことにしよう」
「そうだな」
こうして三人の仕事の相棒だけではない関係が幕を開けたのだった。