第2章 一寸前の、黒が欠ける前のお話
太宰と中也は漸くポートマフィア本部まで辿り着いた。
乱れた息を整えつつも太宰より少し先に正面玄関に着いた中也は早くも異変に気付いた。
「開かないだと!?」
正面玄関の自動扉が開かないのだ。
少し遅れてきた太宰が扉に手を掛けて手動で開く。
「待てッ、太宰!」
そして、中に一歩這入った途端に中也がピクリとも動かなくなったのだ。
その声で太宰は振り返った。
「何、如何したの」
「身体が動かねえ!」
「!」
その言葉を聞いて、太宰は周囲を見渡した。
いつもならば何時であろうと灯っているロビーの電気だけでなく、その辺の人間も中也同様、ピクリとも動かないーーーまるで人形のようである。
太宰の推測していた最悪の事態が、起こってしまったことに太宰は舌打ちし、中也に触れた。
ぽう、と一瞬灯り、直ぐに身体が動くようになった中也の腕を握る太宰。
「絶対に放さないで。また人形みたいに動かなくなってしまうから」
「如何なってるんだ、一体!?」
「ーーー異能」
「は?」
太宰と中也は地下へと続く階段を下りながら話す。
「紬の『終焉想歌』が発動してる…こんな暴走する形で!」
「!?彼奴は手前と同じ『異能無効化』の持ち主じゃなかったのかよ!?」
「違う!僕と同じように見せ掛けていただけで紬の異能は全くの別物だ」
「っ!その話は後で聞くとして手前、紬の居場所判ってンのかよ!?」
「判んないけどっ、此方に居る気がする!!」
太宰と手を繋いだままでなければ動けないとなると手分けして探す事も不可能の中、太宰の勘での行動だとしても中也は従うしかない。
否、太宰の勘が外れるわけないのだ。
ーーーー紬に関しては特に。
それと、先程からしていた甘い香りが段々と強くなっていっているのだ。
この臭いに心当たりのある二人は脚を更に速めた。
バンッ!!
そして、臭いのとても強い……
辿り着いた地下三階にある拷問部屋の一つに二人は勢いよく這入った。
「「紬っ!!」」
目的の人物は間違いなく其処に居た。
しかし、意識が無いのか此方に気付くことは無い。
紬は着ていたブラウスは破かれていたものの下着は少しもズレていなかった。
その光景に太宰と中也は同時に安堵の息を吐いた。