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【文スト】対黒・幻

第2章 一寸前の、黒が欠ける前のお話


今から約6年前ーーー太宰兄妹と中原中也が出会ってそろそろ一年が経とうとしていた頃。


「新種の薬ですか?」


首領室に呼ばれ、渡された紙には最近この界隈を汚染し始めた「何か」についての調査報告が書かれているものだった。

しかし、用紙を握っている太宰が「何か」と首領に問う程にそれには曖昧な内容しか書かれていなかった。
その紙を覗きこんで同じく内容を把握した中也も太宰の疑問と同じ事を頭に浮かべながら首領の方を向き、答えを待った。


「それが未だハッキリしなくてね。新種の薬と云う線が一番濃厚なようだけど、新種の薬なのか、はたまた全く別のーーーー異能の類いで造られたモノなのか………」

「それを調べて消滅させろ、と」

「理解が早くて助かるよ。その『何か』の影響かある種の生物の雄が雌化した例も挙がっているようだし、逆も報告を受けている。同じかは判らないが人間にも影響が出ていてね。うちの傘下の店の女性を壊すほどの男が続出しているらしいんだよ」

「ああ…道理でここ最近、姐さんの機嫌が最悪なわけですね」

「そういうこと。引き受けてくれるね?」


「はー。面倒くさっ」
「拝命致します」


全く別の返事が重なる。

「手前ッ、首領になんつー口利いてやがんだよ!」

「君こそなんだい!?深く考えずにすぐに返事しちゃって。まるで犬みたいだね!あ、既に僕のわんちゃんだったね!」

「ンだとこら!誰が手前の犬か!」


首領の前で何時ものように大喧嘩が始まり、首領がまあまあとなだめているが聞く耳持たない二人を無視してその場にいたもう一人が口を開いた。


「二人の事は解りましたけど僕は何故呼ばれたんです?」

そうもう一人、紬がいった瞬間に、太宰と中也の争いもピタリと止まった。


「紬君も案件は同じだよ。その報告書を挙げた○○君の補助にまわって欲しいんだ」

「っ!紬と別々に動くなんて聞いてない!」

太宰が一番に非難の声を挙げる。


「では未知数の敵の中に紬君を連れていくかね?」

「うっ」


首領が苦笑しながら云うと太宰が言葉をつまらせる。


「治、早く終わらせて帰ってきてね」

「……分かった」

「うぉっ!?おい!?」

そう云うと太宰は中也の腕を取って首領室を出ていった。

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