第1章 一寸先の、宝物のお話
「何となく太宰の子だと思ってるんだろ?」
「……判らない。最期にシたの二人とだし」
中也があの日か、と回想している間にも紬は続ける。
「でも……どうしても…産まないと後悔する気がするんだ。自分でも如何してか分からないけど、でも……」
「……そうかよ」
この双子は見えない何かで繋がっている、と普通ならば信じがたいが中也はそう確信している。
だからこそ、こんなにも悩んでいるのだろう。
兄が傍にいない不安
子供を無事に産めるかの不安
子育てすることができるかの不安ーーー
挙げ出したらきりがない不安。
しかし、それよりも子供を産みたい気持ちが勝っているのだと中也は紬本人よりも理解できた。
「結婚するか」
「……。」
故に、うん、と素直に頷かないことも想定出来た。
この世で一番大事なのは兄だということを中也は正しく理解しているから。
「俺の子供じゃなくても構わない」
「……。」
「だが、太宰が組織を裏切ろうと紬と縁を切るわけが、切れるわけがないことを俺はきちんと判ってる。だから、こうしようぜ」
「…………え?」
「俺が手前等の両親の養子になればいいだろ?ーーーそうすりゃあ腹の子が俺の子だろうが太宰の子だろうが悩む必要ねえし、子供達もきちんとした戸籍が出来るし手前と太宰も繋がったまま」
「ちゅうや~………」
「泣くなよ。そうと決まれば首領に報告して提案通りの戸籍を偽造製作するところからだな。手前もきちんと病院で診てもらわないとなんねーし。姐さんにも報告して協力してもらおう。な?」
小さく嗚咽をあげながらコクコクと頷く紬。
「俺も太宰と同じ様に手前に執着してる。そう簡単に手離したりしねえから」
「…うん」
そうして、計画を実行するために行動するべく紬を少し休めた後、二人で首領の元を訪ねたのであった。