第1章 一寸先の、宝物のお話
「「ぱぱ!ぱぱは!?」」
翌朝ーーー時刻は午前7時。
普段ならば起こさなければ起きない修治と文也が食事の支度をしている中也のところに駆けつける。
その行動に苦笑すると、手を止めて自分の寝室を指差す。
「彼奴はお寝坊さんだから起こしてやンな」
「「はーい!!」」
太宰が約束通りに居ると判るとパアッと満面の笑みを浮かべて元気よく返事をし、示された部屋へかけていった。
部屋に入っていくまでを見届けると食事の支度の最期の仕上げを行う。
「チビ達は朝から元気だねえ」
「よっぽど嬉しかったんだろ。家族が全員揃ったことに」
「……そうだね」
朝から入浴していた紬が子供達と入れ替わりに中也のもとに来る。
「あ。」
「あ?」
しみじみとした雰囲気であったが、突然紬がなにかを思い出したように素っ頓狂な声を挙げたため中也が再び手を止める。
「ねえ、治……服着てたっけ」
「あ。」
昨晩は久し振りに3人で事におよび、軽く後処理をしたあとすぐに全員寝入ってしまったのはつい先刻の事。故に紬も風呂上がりだったのだがーーー
「ぱぱ、ちゃんとおきがえできてない!」
「ちゃんとおっきして!おきがえしなきゃ!」
ああ、矢っ張り服着てなかったな、と。
子供達の声を聞きながらどちらからともなく笑いだし、今度こそ本格的に朝食の準備に取りかかった。
10分ほどして子供達に両手を引かれながら太宰がリビングに現れた。
寝ぼけ眼で食事をテーブルに並べている紬と中也を見ながら太宰は口を開いた。
「何時もこんなに早いの?」
「「ぱぱ、おはようでしょ!」」
「あ、はい。お早う御座います」
「「おはようございます!」」
完全に修治と文也に圧し負けている太宰に紬も中也も笑いだす。
「治がきちんと居るか心配だったようだよ」
「!」
紬の声かけで太宰はと文也を交互に見る。
子供達も太宰を見上げている。
「もう居なくなったりしないよ。ずっと一緒だ」
そう云うと子供達はニコニコしながら大きく頷いた。
「飯にすンぞ。座れ」
「「はーい!」」
子供達の間に太宰が座り、初めての家族揃っての食事を取ったのだった。