第1章 一寸先の、宝物のお話
太宰と紬の会話が途切れた瞬間に子供達がはしゃぎ出す。
「あー!ぱぱとまま、らぶらぶだー!」
「ずるーい!ぼくも!」
太宰と紬に勢いよく抱き着く修治。
「ぱぱも!!」
文也が中也の腕を掴み、引っ張る。
「いや、俺は……って、おい!判ったから落ち着けって!」
動かない中也に痺れを切らしたのか。
文也の身体から見えない力が発せられるのを感じ取った中也が慌てて文也に従って紬と太宰の傍に座り、それに満足した文也は修治と同じように紬に抱きついた。
「ふふ、……っ」
「ぱぱ?」
「またないてるー?」
「泣いてないよ」
「「うそだー!」」
泣いているのを誤魔化す太宰を修治と文也がなでなでする。
紬と中也は顔を見合わせると、目の前の微笑ましい光景を喜ぶように小さく笑った。