第1章 一寸先の、宝物のお話
「まあ、それは手前が怒り狂って暴走しねえように先手打って首領に頼んだモノだーーーこの日のために、な」
その紙に記載されているのは修治と文也のDNA鑑定の結果だった。
一枚目には
修治の名の横には不一致、
文也の名の横に一致の文字が書かれている。
二枚目も同じものかと思いきや違ったのだ。
修治の名の横には一致
文也の名の横には不一致
一枚目と反対の結果が記載されている。
太宰は目の前にいる人物の事はよく知っているのだ。
「…………私は………」
このような事について冗談や嘘を云うような男でないことをーーー。
「自分の事を考えている間に………父親になっていたんだね」
「!」
心のどこかで引っ掛かっていたモノがスッと溶けていくのを感じた瞬間、
「ぱぱ?どうしたの?ぽんぽんいたい??」
はしゃいで食事をしていた筈の修治がいつの間にか太宰の膝に乗って、頬に手を伸ばして云った。
「どこも痛くないよ?」
「ほんとにほんと?」
心配そうに続ける修治、慌てて傍に来た文也をみて首を傾げる太宰。
「本当だとも。如何してだい?」
修治と文也は同じタイミングでポケットからハンカチを取り出して太宰の頬にペタッと当てた。
「「だってぱぱ、ないてるよ?」」
「え……?」
二人がハンカチを見せる。
色の変わった部分を確認した後に自分の頬に手を当てる。
「……あれ……本当だ」
自覚した途端に次々と溢れてくる涙に子供達だけでなく太宰本人も困惑する。
「「ぱぱ、ないちゃやだ」」
ぎゅっと抱きついてきた修治と文也を「大丈夫だよ」と云いながら抱き締める太宰。
「よかったな」
中也は誰にも聞こえない程の声で呟くと、その光景を優しい笑みを浮かべながら見ているのであった。