第1章 一寸先の、宝物のお話
凡ての客席が個室という高級食事処ーーー
その中でもVIPしか使用できない、他の客の声さえ聞こえない個室。
「ふーっ…ふーっ……んっ!しゅう、あーん」
「あー………っ!ふーくん、おいしーね!」
「うんっ!」
「ふーっふーっ……ふーくん、あーん!」
「あー……」
自分の手元にあるものは同じコロッケなのに、何故かお互いに食べさせ合う修治と文也。
適当に注文した肴をつつきながら優しい眼差しで見ている中也に、漸く太宰が口を開いた。
「……今何歳なんだい?」
自身にだけ提供されている酒にも手をつけずに唯、居るだけの存在だった太宰が漸く口を動かした。
「三歳だ。もうすぐ四歳になる」
「……三歳」
また黙りこんだ太宰に小さく息を吐くと中也は懐から何かを取り出し、太宰に差し出す。
「……。」
4つ折りされた紙が2枚。
太宰は少し躊躇いながらそれを受け取ると一枚目を開いた。
「……っ!」
その紙に書かれている文字を目で追い始める太宰。
「チビ達が産まれて直ぐに首領が検査した結果だ。紬にも秘密で行ったやつだから改竄なんて一切してねえぜ」
「………何故」
「……コイツ等は双子なんだが」
中也はチラッと子供達を見る。
此方には一切気にせずにはしゃぎながら食べさせあいっこを続けていることを確認して、小声で続けた。
「修治は文也よりも半分以上小さく………まぁ、端的に云や死にかけで産まれてきたんだよ」
「…っ!」
「首領は直ぐに『二卵性双生児』だと判断した。もしそう仮定すれば、だ。修治が小さい理由も身体が弱い理由も肯定できる一つ可能性が浮上するだろ?」
「……。」
一枚目を読み終え、二枚目を見始める太宰を一瞥して持っていた箸を置いて水を飲む中也。