第1章 今日も夢を見る
自室にもどった歳三はそこで寝ている夢見の巫女を見ていた
なんて綺麗な女なんだ。
清らかで清浄な空気が彼女を包み込む。
だからこそ彼は女ったらしと言われつつも彼女には手を出せないでいた。
触りたい
触れたい
口付けしてみたい
「…でも抱きてぇとは思わないんだよな…」
歳
鈴のような声が
長い睫毛の羽ばたきと共に転がってきた。
この邪な心の呟きが漏れたのかと一瞬ヒヤッとしながら
歳三は彼女を見つめた
寝起きのはずが
彼女はしっかりとした面持ちで
歳三の手を握る。
「沖田宗次郎は白。犯人は別にいるわ。」
心の奥底を読まれたのかと思った。
「何だって…」
「沖田宗次郎は今誘拐されてる。菊一文字は彼が武士に勝負を持ちかけられそれに勝利した証。貴重な刀。」
「お…おい」
「歳、真剣は持てないわ。貴方はその覚悟が無いもの。人は切れない。木刀で戦いそして犯人たちの集団はお縄に。近藤さんと共に。最後は沖田宗次郎が留目を。」
「おいおいおい…いきなりなんだってんだ!また夢か?!そーじは誘拐されてるだと?!今見たのか?」
「見ていたのは数日前。終幕まで見たのは今よ。行くなら木刀で。未来は変わらない。場所は林のなかよ。気をつけて」
そっと歳三の横に転がっていた木刀を持ち上げ彼に握らせた。
「帰ってきたら、明日送ってくれる?」
「明日?今日じゃなくていいのか?」
「今日は歳が帰ってこないから、朝までかかることだから。あと少しで近藤さんがここに来る。どうかこの事を伝えてあげて」
「わかった。お前は飯でも食って寝てろ。明日帰ってくるんだろう?」
「必ず。」
「神主さんには俺も一緒に謝ってやるよ。ありがとな」
「ふふっ」
ばたばたと廊下を駆けていく歳三を見送って
彼女も部屋を出た。
父上、怒ってるかしら?