第2章 屯所
「おはよう、歳」
「…なんか、寝れなかった。」
「京に来てからはずっと寝不足でしょう?」
「そんなこたーねぇ」
辺りに誰もいないか確認してから土方はぼすっと縁側に横になり巫女の膝の上に頭をのせた。
彼女は彼の頭を撫でながら風鈴の音を聞いていた。
「もう夏だね」
「初夏ってやつだな。寝苦しいったらありゃしない」
「髪の毛結い直す?」
「いや、ばーっと水浴びてくるわ。夏は嫌いだ」
土方はやっとの思いで上体を起こし、井戸へ向かった。
実はずっと総司との話し声を聞いていた。
目を瞑ってもう少し寝ようとしても
二人の話し声が頭に流れる。
そうだな総司。いったいどうなってるんだ俺は。
「お早うございます土方さん、朝ごはんぐらい食べないかんよ」
井戸では山崎歩が大量の食器を洗っている途中だったが桶を手渡してくれたので土方はゆっくりと其れを井戸に沈めた。
「顔色悪いですね」
「…いつものことさ」
「ちゃんは?」
「大丈夫。いつものあいつだ。」
「夢は?」
「幕府は終わると、言い続けている。あと桝屋から手を引けと。特に歩くんと山崎君は。時が来るまでそっとしておけと。」
「調査せぇへんの?」
「しない。の夢は当たる。あとは時が知らせてくれるのを待つだけだ。」
「…わかりました」
不思議な力なんぞ信じんかったけど
夢見の巫女の力はほんもんやから
信じなしゃあない。
なんもせんくても
ちゃんは絶対に時を逃さへん。